政府は、国税通則法「改正」案を今国会に提案しました。名称を「国税に係る共通的な手続き並びに納税者の権利及び義務に関する法律」に変え、「納税者権利憲章」は国税庁行政文書に格下げするなど納税者に新たな義務を課し、権利を侵害する内容に、「極めて不適切なものと判断」(日本租税理論学会)など反対の声明が出されています。一方、マスコミは危険な中身をほとんど報道せず、中小業者からは「どんな影響があるのかわからない」との疑問も出されています。

出所:全国商工新聞2011年2月号外の2・3面国税通則法の改悪Q&Aから

今できるもっとも簡単な「国税通則法」大改悪の反対運動は署名を国会に届けることです。個人の方は個人署名を団体の方は団体署名をダウンロード・印刷・記入しお近くの民主商工会(大阪全国)へお届けください。

「納税者権利憲章」制定は、歓迎すべきでは?
納税者の権利を守る憲章の制定は必要であり、準憲法的なものにすべきです。ところが今回提出された法案(以下、法案)では権利ではなく義務を盛り込んで「憲章」と称し、単なる行政文章として、国税庁長官にその作業を委託しようとしています。財務省・国税庁が長年狙ってきた調査権限を強化するもので、とても権利憲章と言えるものではありません。
税務調査や徴収を執行する国税庁にの納税者権利憲章を策定させるのでは、納税者の権利を守るものにはなりません。現に不当な調査・徴収が横行しています。世界の状況を見てもOECD加盟30か国で、納税者権利憲章がないのは日本だけです(図表1)。世界の憲章も、違法・不当な調査・徴収行政への国民的な批判のたたかいの中から生まれたもので、「権利と義務」を併記している憲章はありません。
憲法原則を税制・税務行政に貫き、国民主権に貫かれた「納税者権利憲章」の制定が求められています。
権利憲章は納税者保護の為に国に義務を負わすもの!
国税庁長官が現法を並べ替えるだけなんて以ての外。こんなの納税者権利憲章じゃない!!
白色申告者にも記帳を義務付けるんですか?
「法案」では、税金を取りやすくする為に記帳の義務付けを狙っています。しかし、本来、どういう記帳をするかは個人の自由です。中小業者は、事業を営むために記帳しています。
そもそも、現在の税法は記帳を義務付けない白色申告を前提にしており、青色申告は例外です。記帳するかしないかは全く個人の自由に属する問題で、国家が法律で強要することは憲法原則(個人の尊重・13条、財産権の保護29条など)にも反します。
政府は青色申告制度に誘導してきましたが、普及割合は55%です。全業者への記帳義務化の狙いは、消費税の簡易課税の縮小や免税点引き下げ、税率アップをいつでも可能にするための措置です。
「法案」では、個人の白色申告者の記帳義務化と合わせて、@必要経費を全額認めない概算控除制度を導入するA正しい記帳を行わないものの経費は制限するB記帳水準に合わせて専従者控除を制限する−という罰則規定まで準備しています。
生業層(所得300万円以下)にまで記帳義務付けは行き過ぎ!
記帳を条件に控除を設けるのは論外では
税務調査の際、帳簿書類等の「提示」や「提出」が義務化されるんですか?
税務署が納税者の承諾なく自由に帳簿を持ち帰ることが認められれば調査権が無原則に拡大されます。「法案」では現行の質問・検査に加え「帳簿書類その他の物件(その写しを含む)の『提示』『提出』を求めることができることとする」としています。
通常の税務調査は任意調査です。現在は納税者の承諾を得て必要な資料を預かっていますが、今後は税務署が必要だと思えば承諾なしに帳簿等を持ち帰ることが可能になります。税務署員の「質問検査権」は各個別税法に明記されており「犯罪捜査と解してはならない」と調査権の拡大を戒めています。しかし、帳簿等の「提示」「提出」を法律で明記すれば、令状もないのに調査に必要のないものまで押収される危険性があります。
また営業に重大な支障をきたすのは明らかです。たとえば医者がカルテまで提出させられることになれば患者のプライバシーも守れません。納税者の権利とは無縁のもので逆に不必要な義務を強要することになります。
「法案」ではその適用範囲があいまいな点が沢山あります。そもそも「任意」なのに、まるで犯罪捜査のような内容です。また、令状のないのに帳簿書類等の「提示」「提出」は憲法35条にも反するのでは!
税務調査の際、事前通知を行うようになると聞きましたが
国民は主権者であり善良な納税者として尊重されるべきで事前通知は当然です。しかし「法案」では、ただし書きで「正確な事実の把握を困難にする恐れ」「違法もしくは不当な行為」や「適切な遂行に支障を及ぼす恐れ」がある場合は、事前通知を行わないとしています。このただし書きがあれば、事前通知なしの調査が横行することになります。
日本の納税者制度は「納税すべき税額が納税者のする申告により確定する」(国税通則法16条)と、自主申告権を明確にしています。税務調査ははあくまでも例外で任意調査にすぎず、「犯罪調査のために認められたものと解してはならない」(所得税法や法人税法など)とされています。現行の税務運営方針でも「事前通知の遂行に努める」と明記してます。(図表2)
「法案」は「通知内容以外の事項についても調査対象となりうる」 としています。反面調査も「調査対象者本人には通知しない」など、課税庁の都合で際限のない調査ができることを狙っており大問題です。
全商連のアンケートでも「事前通知なしの税務調査」は76.6%に上っています。例外規定をなくし無条件で事前通知を行うようにすべきです。
原則通知する。とありますが、例外規定の範囲があいまいすぎるしその理由も言わなくてよい!
こんなのありですか?
税務署が修正申告を迫る「勧奨」を法定化するのですか?
修正申告の強要を法律で明記することは課税庁の権限を強化するものです。「法案」は税務調査が終了し、公正・決定が必要だと認められた場合に「課税庁の職員は修正申告または期限後申告の勧奨を行うことができる」と法定化しようとしています。
今でも納税者が任意に提出する修正申告で、国税の徴収権の時効が5年間であることを悪用。不当に修正申告を迫る例が多発しています。「売り上げが漏れている。悪質だから7年修正してもらう」 と脅されることも少なくありません。
7年間さかのぼって、更正や決定ができるのは「偽りその他の不正行為」が認められた場合のみです。「悪質な行為」は、課税庁側が調査により把握した事実を持って、悪質かどうかの検証と証拠により立証することが必要です。
修正申告は納税者の当然の権利です。この権利を税務署の修正申告強要の根拠にする法改正は許せません。
再調査も可能に
「法案」はさらに「調査終了通知」を交付した後でも「再調査できる」としています。諸外国では同一税目、同一年度の「再調査」を法律上禁じているもので、納税者を不安定な立場に置く「再調査」はやめるべきです。税務署の質問・検査権が野放図に拡大される危険なものです。
いったん調査が終了しても、何時でも再調査ができるとしています。刑事訴訟法でも一事不再理としているのに任意の調査で再調査がいつでもできるなんてなんで
なんで任意の調査でも勧奨できるのですか
すべての処分について理由付記をするようになると聞きましたが
「法案」では「すべての処分についての理由を付記する」としながら、個人の白色申告者については「記帳・帳簿保存義務の拡大と合わせて実施する」としています。これまで、課税処分の理由付記は青色申告のみに実施されていました。申告の仕方によって理由付記を条件づけることがそもそも間違いです。しかも所得300万円以下の零細な生業層(約54万人)に記帳義務を課すことは実務負担の押しつけ以外のなにものでもありません。
記帳を法的に強制し税務当局の日常的な監視と干渉の口実を与えることは際限のない調査と推計課税が横行することにつながります。「法案」は「記帳・帳簿等の保存が十分でない白色申告者に対して」は「保存状況に応じて理由を記載する」としています。課税庁の効率性・便宜性だけに配慮した規定は許せません。
理由付記は行政処分に対する国民・納税者の権利です。諸外国ではいかなる処分であっても(記帳状態の良し悪しに関わらず)理由付記をしない例はありません。無条件で認めるようにすべきです。
理由付記はどんな場合にも行うべきです。理由も延べずに更正処分するなんて以ての外!
税務署が税額をつり上げる増額更正を5年に延長するんですか
税務署が更正できる期間が5年に延びたら、仮装・隠ぺい以外も法律で7年更正が認められることになります。現行では納税者の減額更正請求は1年間しかできませんが、税務署の増額更正は3年間できることになっています 。ところが納税者が任意に提出する修正申告は時効完成までの5年間提出できます。この点を悪用して、税務署が「5年も7年もさかのぼれるぞ」と脅して5年、7年の修正申告を強要する事例が後を絶ちません。
悪質な仮装・隠ぺい以外は、7年の更正処分はできません。税務署は徴税強化の一環として、納税者が知らないことをいいことに不当な修正を押し付けているのです。そして、修正申告をすると、それは納税者の意志ということになり、不服審査の請求をすることができません。
納税者の減額更正期間を5年に伸ばすことをセットに押し出していますが、先の点から単純に喜べません。税務署が更正できる期間が5年に延びたら、合法的に5年、7年分の更正処分や修正の脅しができることになります。まして、消費税は2年前が基準期間となるので7年の調査が当たり前となってしまいます。
減額更正請求を1年から5年にするを前面にだし、増額更正の延長を隠そうとしたやり方は卑怯!
現行3年のところ5年調査が横行しているのを合法化する狙いは明らか
納税者番号制を導入すると言っていますが
税にとどまらず、全国民の個人情報を政府が握る危険があります。政府の「社会保障・税に関わる番号制度に関する実務検討会」は、番号の利用範囲を「税プラス社会保障分野」で利用するアメリカ型から出発し、将来的には「幅広い行政分野」で利用するスウェーデン型を検討。11年秋にも法案を提出するとしています。
政府・民主党の狙いは、税と社会保険料を一体的に徴収する歳入庁構想の実現です。09年度末の滞納税額は国税だけでも1兆4955億円もあります。これと社会保険関連の滞納に対し、税務署権限を駆使し一気に徴収強化を図ろうとしているのです。
納税者番号制の導入は国民監視を強めプライバシーも侵すものです。また、インボシス(税額表)などが導入されれば、すべての取引に付記し保存義務を課すなど、中小業者に多大な事務負担を負わせます。さらに税と社会保障の共通番号化がされれば、各税金や国保・社会保険料を滞納した場合、医療サービス等の給付を制限するなど制裁措置を拡大する恐れがあり、憲法の保障する国民の生存権を脅かしかねません
番号制は、アメリカでも韓国でもものすごく問題が起こっています。
番号制を導入するには、巨大な公共投資が必要で、多くの天下り先確保の狙いも明らかでは
税金の給付の大前提になってるが、税金は必要な金額だけ納付するのが原則!!
取ったものを申告したら返すなんて国家の横暴そのものだと思いませんか

図表1 立ち遅れが際立つ日本の納税者権利の保護状況
世界の納税者権利保護の状況(○:あり・×:なし)

  日本 アメリカ ドイツ フランス イギリス 韓国 カナダ スペイン







税務調査の事前通知 ×
同一年度の再調査の禁止 ×
税務調査の終了・是認通知 ×
修正申告の慫慂禁止 ×
納税者権利憲章(保護法) ×
制定時期(年) −− 1988 1977 1975 1986 1997 1984 1998
※慫慂(しょうよう):すすめること。日本では権力を使用したしつような督促となっている
出所:「世界の納税者権利憲章」をもとに湖東京至氏作成

※要点は藤井寺民主商工会でまとめました。